CMをはじめ、PVやMV、さらには映画など、さまざまな映像コンテンツを作成するピラミッドフィルム。なかでも企画コンテの作成からはじまり、撮影の演出を担い、編集作業を経て仕上げるのが企画演出部だ。もちろんキャスティングや音楽にも責任を持つし、クライアントや広告会社、タレントさんとも良好な関係を築かなければいけない。やりがいは大きいし、逆に苦労も多岐に渡る。入社2年目から20年以上のベテランまで総勢10名のディレクターが勢ぞろいし、仕事のこと、入社の動機、日ごろ思うことなどを大いに語ってもらった。
*ピラミッドフィルムWEBサイトでは、Directorの紹介ページで、それぞれが手掛けたCM作品も公開中。ぜひご覧ください [ https://www.pyramidfilm.co.jp/directors/ ]
山本和樹(以降:山本)まずは、若手社員からいこうか。
三品万麻紗(以降:三品)私は、尊敬するディレクターの富永まいさんがピラミッドフィルムの出身だったからです。あとは、おもしろい人がいる会社で働きたいと思っていて、たまたまピラミッドフィルムで映像の仕事をしている知り合いの方がおもしろかったから入ったという感じですね。
山本史門(以降:史門)僕はシンプルに、ピラミッドフィルムがいちばん最初に受かったから、です。選んだというよりか、選んでもらったという感じで。
鈴木郁也(以降:鈴木)僕は大学で映像を学んでいて、就職してからも映像に携わりたいと思ってピラミッドフィルムを志望しました。
山本中堅の清矢は?
清矢陽子(以降:清矢)面接がおもしろかったからですかね。急に面接官のプロデューサーから「よーい、スタート! って、大きい声で言ってみて」と言われたり、和気あいあいとした面接でした。
山本面接がおもしろいっていうのは、ピラミッドフィルムの特徴だよね。
串田壮史(以降:串田)僕は学生時代に、アニメーションでもフィクションでもドキュメンタリーでもない、変わった感じの“実験映像”を作っていて。で、映像で飯を食っていくなら、映像を教える側に行くか、広告に行くかで迷ってて。
山本大学で映像広告のことを勉強してたの?
串田それがしていなくて……。広告の世界に対する知識もないし、無理だろうなって思ってたんです。そんなタイミングで、ピラミッドフィルムが過去に手掛けていた雑誌で操上和美さん※の作品を目にして。インタビューとともに、裸の女性にペンキを塗ったような写真が載っていたんですね。この人が社長なら“実験映像”を持っていっても、見てもらえるんじゃないかと思って、DVDを送って採用してもらいました。
※操上和美。ピラミッドフィルム名誉会長 写真家。
山本転職組の吉田は?
吉田義道(以降:吉田)僕はピラミッドフィルムからスカウトされたんです。もともとモーショングラフィックスをやっていたんですけど、その手の仕事が当時ピラミッドフィルムにいろいろあって、「手伝ってくれないか」という話からフリーランスで仕事を受けていました。そのうち、「ピラミッドフィルムに入ってくれ」と言われたので、入りました。
山本田中は確かアルバイトからじゃなかったっけ?
田中佑典(以降:田中)はい、半年間の実習期間を経て入社しました。実は大学を卒業してから、就職もせずにニート時代が続いていて。でも、映像はやりたいなと思っていたから、学生のときに唯一知っていたピラミッドフィルムを受けてみようと。
山本実習期間中はどうだった?
田中マジで後がねえ! とビビリながらやってましたよ。「無理です、できません」なんて言えねえ! って。
神口智志(以降:神口)じゃ、今は調子乗ってんなぁ。
田中いやいや、今もビビリながらやってますよ(笑)。
三品アルバイト中って、なにをしてたんですか?
田中企画制作だけをずっとやってた。でも、自分がおもしろいと思うものを提出しても、「は? お前のおもしろいなんて知らねえよ!」ってなるからマジでわかんなかった。
神口コミュニケーションの問題があるからな、田中は(笑)。
三品なら、なんでこの仕事ができるんですか?
田中ん〜、他のことは余計にできないんだと思う。たとえば、俺に住所変更なんて任せられると思う?
神口なんで市役所で働くんだよ(笑)。
田中(笑)。じゃあ、神口さんがピラミッドフィルムに入った理由も教えてくださいよ!
神口僕は“ピラミッドフィルム”って名前がかっこいいなって思ったから(笑)。
田中はい?(笑)
神口それだけが理由じゃないけど(笑)。大学の教授が映像広告会社で企画演出部に勤めてて、その人が「ピラミッドフィルムの映像がかっこいい」って言ってたのもあったし。会社がおしゃれだったし?
田中……へえ。和樹さんは?
山本俺はもともと違うプロダクションで演出していて、ピラミッドフィルムで働いてた先輩に声をかけてもらって中途で入った。ピラミッドフィルムはかっこいい映像作ってるって思ってたから、まさか入れるとは思ってなかったなぁ。で、最後に牧野、聞こうか。
牧野元彦(以降:牧野)僕は、操上さんのもとで働きたいと思ったから。もちろん作品は知ってたけど、面接のとき操上さんにはじめて会って、すげえかっこいい人だなと思って。
吉田新鮮でしたね。ピラミッドフィルムに入る前は、一本の制作期間が4〜5ヶ月かかる映画ばかり作っていたので、言わばずっと同じ企画をやり続ける状態。ピラミッドフィルムでは一本の制作期間が短いので、めまぐるしくて楽しくて、飽きないんですよね。
山本転職組だと、より新鮮だよね。
吉田企画演出部がどういう部なのかハッキリわからないままでの転職だったから、慣れるまでは大変でしたけど。今ではやっと、なんとか仕事ができるようになったという感じですかね。
清矢私は「この仕事がやりたい!」と言ったらやらせてくれる、自由な会社だと思いました。とはいえ、私は真面目担当みたいになりつつあるんで、そろそろ私にも楽しい仕事をやらせてくれないかなと思ってます(笑)。
神口この間やってたじゃん、念願の“歌って踊って系”。よかったよ!
清矢本当ですか? 歌って踊って系の企画出し続けて、やっと通ったんですよ!
神口清矢ちゃんっぽいなって思った。
串田やりたい仕事ができるという話もそうですけど、ピラミッドフィルムはものすごい個人主義の会社だと思いましたね。たくさん仕事が取れても、取れなくても個人次第。しかも、仕事が取れない人がいても怒られもしない。
山本そこが優しいところでもあり、逆に厳しいところでもある。給料もある時期になったら歩合制だから、すごくもらっている人とそうでない人の差も激しい。そういう意味ではシビアだな。後、外部の仕事も基本OKだしね。
牧野若手は、入ってみてどう?
史門いや〜、日々落ち込んでますよ(笑)。自分ではいいと思って出した企画が評価されなかったり、自分では微妙だと思っていた企画が褒められたり。自分の個性をどう企画に出していけばいいのかわかんなくて。
牧野難しいよね。
史門自分が思ってることと、周りに求められてることのギャップを感じてます……。
山本鈴木は入って3年目だけど、どう?
鈴木まだまだ難しいですね……。大学生のころは、自分の頭のなかで企画が見えていればよかったけど、広告はチームワークが大切だから、考えを共有することがまず難しい。
山本コミュニケーションはホントに大切。三品はピラミッドフィルムの人のおもしろさで入ったけど、実際に入ってみて印象は変わった?
三品変わらずおもしろいですね!
神口たとえばどんなところ?
三品私の地元の宮城県も好きなんですけど、東京にいる人は考え方がおもしろいなって思っていて。
吉田おい! 俺も宮城県出身だよ!
神口宮城県の人だっておもしろいわ!
三品いやいやいや、私だって宮城県の人好きですから! そうじゃなくて、単純にピラミッドフィルムのみなさんがおもしろすぎるというか、思考回路が若い!
神口思考回路が若いっていうのは、いいことだけじゃないしな……。
三品ああ、ダメだ(笑)。私のピラミッドフィルム愛が伝わらない(笑)。
牧野企画演出部で行う試験の目的は、その人が秘めるおもしろいものや、何か光るものを探っていくこと。発想力があるか、幅広くものごとを見られるか、コピーを考えられるか、文章が書けるか、絵が描けるか、コンテを描けるかとか。あと、ここ数年は企画の課題について話し合う、グループディスカッションを取り入れてみたり。やっぱり、コミュニケーション力があるに越したことはないから。それらの試験に残った人を、面接する感じかな。
山本試験は人も技量も見るよね。昔は俺とか牧野部長が作っていたけど、最近は先輩社員を中心に、試験から面接まで参加してもらっています。みんなも一通り作ってくれたよね。
神口はい。僕が考えた試験は、その人が何を考えてるのか、その人がピラミッドフィルムに入ったとき、どういう動きをするのかが見える問題を考えました。たとえば、打ち合わせで煮詰まったときに意見を言えるのか、黙ってるのか、とか。
吉田僕も考えました。企画演出部の試験に受かる人は2通りいると思っていて、ひとつは僕らが思い浮かばないような発想力を持っている人。ふたつめは、絵解きができるかどうか。クライアントが抱えてる問題を解決するために、どう対応するのかとか。そういうところが見える試験を考えました。
山本面接では人間性をよく見るよね。この人となら一緒に仕事をやりたい、と思える人を探す。よく面接で何をしたらいいのかを結構聞かれるんだけど、自分の意見を言ったほうが通りやすいよね。
牧野まあでも、採用人数がめちゃくちゃ少ないですからね……。
山本採用しない年もあるし。
神口うわぁ、それ運じゃないですか。
牧野そういえば、僕のころはまだ操上さんが面接していたんだよ。
串田僕までの世代は、操上さんが面接でしたね。
山本俺も操上さんの面接は、今でも覚えてる。第一声が「フランス映画は好きか?」だった。でもフランス映画はあまり観たことがなくて、「アメリカ映画が好きです」って話ししたら、会話が続かなくなって。「あ〜、俺落ちたな」って(笑)。
一同(笑)
山本ピラミッドフィルムって、操上さんに憧れて人が集まって、今となっては100人を超える会社になった。操上さんの存在はみんなの仕事にも影響を与えていると思うんだけど、最近一緒に仕事をした串田はどう思った?
串田操上さんは、企画を理解する力が強い方だなと思いましたね。コンテをすごく読み込んでいて、CMの30秒の使い方をしっかりと考えている。
山本操上さんと若手ディレクターが一緒に仕事できるチャンスを与えるのが、ピラミッドフィルムの素晴らしいところ。かなり貴重な体験だし、いろんなことを感じて学ぶことがいっぱいあるしね。生きるレジェンドだから。
神口僕も入社5年目のころに、はじめてご一緒させていただきました。その現場は1日で3本のCMを撮らないといけない、かなりヘビーな現場でした。フィルムで難しいアクションシーンを20テイク以上も撮り直して。でも、操上さんが現場をたのしく盛り上げてくれたり、助けてもらいましたね。
牧野操上さんらしいね。
神口あと印象的だったのが、現場に革ジャンを着てくること。ちゃんとかっこつけて現場に入るのは大事だなって思いましたね。そういえば、去年午前中にキャメル※で仕事をしていたら、寝起きの操上さんが降りてきて、もうルイスレザーのライダース着てましたから(笑)。
※操上和美の写真スタジオ。
山本操上さんだったらレザー着て寝ているかもしれない(笑)
神口操上さんは話もおもしろいですよね。しゃべりのおもしろさは、日本の写真家でいちばんだと思います。仕事をするよりも、飯を一緒に食べた方がいいくらい。あと、忘年会の最後の話も毎年おもしろい。あのときが、いちばんピラミッドフィルムに入ってよかったと思う瞬間ですもん(笑)。
牧野操上さんは、ピラミッドフィルムの社員に対しては優しいんだよね。身内だから育てようとしてくれるみたいで。
串田確かに。物腰が柔らかくて、丁寧なのも印象的でした。
清矢いいな〜。私も操上さんとお仕事ご一緒したいです。忘年会でしか会ったことないから。
山本若手はなかなか会う機会はないから、忘年会では必ず新入社員を紹介するようにしているんだけど、どう? 実際会ってみて。
史門緊張しました。しっかり握手をして、「頑張れよっ」て声をかけてもらって。
三品私が新入社員のときの忘年会では、芸能人みたいに女性社員が操上さんを囲んでたのを覚えてます(笑)。
牧野女子たちが、アプリで操上さんに耳つけたりしてたよね(笑)。
山本あれはすごかった(笑)。他の人がやったら業界から消される!
一同(笑)
山本ちなみに、広告業界の仕事ってどう?
神口この仕事のいいところは、飽きないところですね。毎回仕事の内容も違うし、その分毎回怖いし、いつも失敗するんだろうって思いながら生きてます。でも、やっぱり同じ事を繰り返す毎日は辛いだろうから、CMディレクターはいい人生を歩めるだろうなって。
山本「CMディレクターはいい人生を歩める」。いい言葉だな〜。若手のみんなはどう?
三品私はまだ、CMを自分の人生の仕事としてやる決意ができていないです。CMって自分のやりたいことを表現する場所ではなくて、新しい商品とかサービスとか、みんなが知らないことをお知らせする道具のひとつだと思っているから、それを今みなさんがどう考えて、どういう風に作っているのかを知るのが、すごく楽しい。
山本なるほどね〜。
三品みなさんそれぞれこだわりとか意識してること、スピード感も全然違うし。それを観察して発見して勉強させていただいてるのが、今すごく楽しいし、飽きないですね。
鈴木僕は、自分の性格に合ってるかなと思うようになってきました。
三品あれ、鈴木さん髪切りました? 似合う〜〜。
鈴木あ、あざす。自分も飽き性で、熱しやすく冷めやすいところがあるので、企画をどんどんいただいて、2週間ごとに違う仕事をして。その時々で考えることも違いますし、興味を持っていなかったものに興味を持つこともあるし。それが楽しいです。
山本仕事のこだわりとか、やりがいはある?
串田僕のこだわりは個性を主張しないことです。みんなが求めているものを察知して作ることが大切ですし、意見を対立させるよりも、相手の意見を飲んだほうが結果的には仕事もうまくいくことが多いですね。だからその幅を持っているということを、相手に見せる努力はしてます。個人的には、広告業界で個性が強い人って、選手生命が短いと思っていて(笑)。
神口三品はこの間、自分のことクセが強いって言ってたよね。
三品あ……。
串田いいんですけど、流行り廃りが激しいイメージ。特徴的なクセがある人は10年と保たないですね。同じような仕事が来はじめると、ちょっと危険なサインです。
山本串田はできるだけ長く仕事がしたいって言ってたよね。
串田そうですね。やっぱりその業界のなかでいちばん最後まで残ってる人が、成功者だと思います。あと、長くこの仕事をやってる人っていちばん個性がありますよね。長くやっていると自然と周りの人が、「あの人はこういう人だから」って思うようになるので、仕事を振りやすいし実力を出し続けられる。
清矢私は串田さんの話とは逆いっちゃうんですけど、「清矢さんって本当に何でもやりますね」と言われているんです。だから、そろそろ「清矢さんといえばこれだよね」みたいなものがあったほうがいいのかなっていうのが、最近思っているところです。
山本じゃあ、田中のこだわりは?
田中こだわりっすか……。ないな。
山本おい! 考えておいて。じゃあ史門は?
史門こだわりかはわからないんですけど、最近意識していたのは、スタッフに僕が落ち込んでいる姿を見せないこと。ハードな撮影現場で、いつもなら先輩に怒られて落ち込むところを「すみません! お願いします!」って。普段のテンションを300倍ぐらいに上げて、現場を乗り切るんです。そしたら最後に同い年ぐらいの美術さんとか衣裳さんとかが、「むっちゃ楽しかったです!」と言ってくれて。自分は無理して頑張ったけど、それが伝わって最後に報われた仕事でしたね。
山本はい、田中は?
田中え?
神口おいおいおい、なに今はじめて聞いたみたいな顔してるんだよ。
田中もう回ってこないと思ったから(笑)。
三品この間、企画打ち合わせの帰りに田中さんが「俺はおもしろいことしかしたくねえよ」って言ってましたよ。
田中そんなクソだせえこと言ったっけ?(笑) まあでも、ちょっと遊びの幅があるといいよね。ちょっとでも自分の興味のあることを企画にのせたいって、ずっと考えてはいるな。
牧野楽しさは大事だよ。僕は撮影が終わった後に、飲みに行くのがやりがい(笑)。そのために撮影も頑張れるし。
牧野ん〜、どれかひとつは決めにくいけど、鈴木京香さんに出演していただいた化粧品メーカーのCMは新鮮だったかな。課題もあったけど、なんとか解決して完成したという経緯もあって、いまだに好きな作品です。あと、操上さんとやったポイント会社のCMとか住宅メーカーのCM はすごく勉強になったし、いいものができたかな。まだ、「DIRECTORS」に追加していない作品もあるので、追って見てもらえると。
山本そうだね、「DIRECTORS」はどんどん更新していく予定なので、業界の方とか映像を志望してる学生さんにはぜひ見てもらいたいよね。清矢はどう?
清矢3月公開なのでまだオンエアしてない案件なんですけど、私が考えたダンスの振り付けとか替え歌を採用してもらえて、しかもそれをタレントさんがやってくれて。自分がやりたかったことができた企画でした。プライベートで習っていたダンスを活かせて、うれしかったです。
神口え!? ダンスやってたの?
清矢今はコロナの影響で1年休んでますけど。
神口何ダンス?
清矢ヒップホップをやってます。フラダンスもかじってますし。
神口(笑)。はじめて聞いたわ、それ。
清矢そうでしたっけ? ストレス発散にもなるし、結構ハマってるんです。NiziUも踊れますよ。
神口めちゃくちゃ意外!
清矢なので、ダンスものの企画だったりモデルのポージングだったり、CMで活かせたらいいなと思いつつ。
吉田僕はどれも印象深いんですけど、ミランダ・カーさんに出演していただいたエステサロンのCM。撮影地がロサンゼルスで、撮影部隊も世界中から集まってきた優秀な人たち。こんなところにお金を使うの? って。日本では体験できないことも多くて、スケールのデカさに驚きましたね。
山本吉田は英語を話せるしな。
吉田そのときも英語で演出がやれる人ということで、選んでいただきました。
山本特技が仕事になるいい例だな。じゃ、満を持して田中いく?
田中!?
山本また、はじめて聞いたみたいな顔してる!?
田中えっと…、はい。CMでなくてもいいですか? 先ほども話したJAC AWARDの作品※で、仕事じゃないんでのびのび楽しんでできました。商品に興味あるというよりも、てめえが楽しくなかったら意味がないわけで。しかも、評価が目に見えたりしたので、自分のモチベーションにもなったから楽しくてよかったなと。
※JACが主催するJAC AWARD。JAC AWARD 2019で田中佑典監督作品「こい」がディレクター部門にて中島信也賞を受賞。
串田僕はステーキ屋さんのCMですね。CMは15秒でいかにシズル感を出せるかが大事だと思うんです。要は、映像をとおして味覚を刺激できるか。シズル感を出せるディレクターはいいディレクターだと思っていて。
山本なるほど。
串田視聴者がステーキを食べてどんなときにおいしそうだと思ったかとか、どういう角度でステーキを見ていたかとか、肉の厚さは? 湯気は? とか、視聴者の記憶のなかで“ステーキをおいしそうと思った瞬間”を映像で再現しました。最後には、社長が出てくるんですけど、社長もシズル感のひとつで。
山本確かに社長出てた!インパクトあったね。
串田CMではただステーキを焼いているだけですけど、多くの人が共感できて、心を刺激する映像が作れたなと思っています。
神口僕は作ったMVのなかで再生数が伸びているのは、BABYMETALの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」ですね。とにかく作品が人の目に触れることがこの仕事の醍醐味だと思うので、そういう意味で印象深い作品です。
山本どれくらい再生されてるの?
神口今、2,700万回再生くらいですね。仕事自体は、内容がてんこ盛りで、撮影中にコンテを書き直したり、ストーリーを変えたり、大変ではありましたけど。あと公開当時にリアルタイムでコメントとかを見ていたんですけど、当時低評価がすごく多かったんです(笑)。日本人に叩かれて、外国人に絶賛される変な流れができていて。でもそれ実は狙っていたことで、叩かれまくって、バズればいいねと。僕らの目論見通りになったのもおもしろかったですね。
山本俺は4WDのクルマのCM。11年間も演出をやらせてもらって、毎回世界中いろんなところに行って、過酷な状況の中でお金もかけたスケールのでかい仕事だった。アマゾンまで行って撮影したし(笑)。串田も言っていたけど、自動車にもシズル感が大切で、四駆でしかできない走り(シズル)を常に追求して新しい映像を外国人スタッフと撮影するため切磋琢磨してた。CG、合成一切なし! すべてライブだったのがよかったかな。そのおかげで、メーカーで2年連続最優秀CMに選ばれて、嬉しかったな。一生忘れられない体験と思い出。
串田世界中に行ける仕事は今となっては貴重ですね。
三品私も海外行きたい(笑)
牧野いや仕事仕事。
山本こうやってみんなに聞いただけでも、それぞれカラーも得意分野も違ってておもしろいね。若手も早く自分のカラーをだして、ワクワクする仕事をやってほしいな。
鈴木 史門 三品はい!
山本今後の話だけど、ピラミッドフィルムはCMを作るだけじゃなく、“演出の集団”として進化していきたいと思ってる。串田は最近映画を完成させたけど、どうだった?
串田ピラミッドフィルムでも映画業界を知ってる人はあまりいないと思うから、僕がその道を開拓しているイメージで、すごくやりがいがありますね。CMは何か商品を売るための術で、映画はそれ自体が商品。その難しさを実感しています。
鈴木映画を作るって、ものすごく大変ですよね。映画は総合芸術だから、作るのにすごくお金がかかるし、多くの人を巻き込んで作らないとできないので、半端な覚悟じゃできないです。だから串田さんを見てて、すごいなと……。
山本神口はMVをたくさん作ってるよね。今までにどんなの作ってたっけ?
神口いや、わかんない……。1年間ぐらいずっと作り続けて、CMよりも余裕で数は多いですね。もともとMVが好きで、僕がMV作ったらもっとよくなるとずっと言ってたら、本当に依頼が来ちゃって震え上がりました。やべえ! って。それでも好きってことを言い続けるのは大事ですよね。まあ、今やりたいかって言われたら「暇だったらやります」くらいだけど。
山本もうMVを作りたい欲は満たされたな。
神口ですね。MVとCMを作ってみてわかったのは、MVは作ったものに対するレスポンスがあること。作品を見た人がどう思ったのかが見えるのは、すごくいいことだと思うんです。自分がやった意味があるというか。報われたなって思うときもあるし。そういういろんな思いをしながら仕事ができるのは、いいことだなって。
山本史門もMVやりたいんだろ?
史門やりたいです! でも今やりたいのは、どっちかというと映像コンペ。普段のコンペって「予算はしっかり出すからクオリティーの高い企画を出して!」っていう感じじゃないですか。そうじゃなくて、低予算でもいいし、なんなら世の中に出さなくてもいいから、手軽にチャレンジできるようになるとうれしいです。
神口企画は見てもらってなんぼな気がするけどね。
史門もちろん見てはもらいたいんですけど、普段のコンペは若手にとってハードルが高いから、もっとラフにコンペに挑戦したいというか。
山本いいね。新しいことに挑戦するのは会社としてもウエルカム! 史門の希望で、宣伝会議のコピー講座も会社から通わせてるしな。じゃあアワードで中島信也賞を取った田中は、どう?
田中そうですねー、いちおうテーマはあるけど、理由のない映像を撮った感じですね。これからはちゃんと説明できるものを作らないといけないし、自分で映画も作ってみたいし、MVも作りたい。いろいろあるけど……褒められたい(ポツリ)。
一同(笑)
清矢わりと好奇心旺盛なので、これまでに自動車とか男性らしい企画から女性らしいものまでいろいろやらせてもらいましたけど、今はMVをやりたいです。
神口いいね〜、MV。
清矢最初に、ピラミッドフィルムに入った理由は面接がおもしろかったって言いましたけど、本当はPerfumeのPVが大好きで、それをやってたのがここの卒業生(田中裕介)だったからなんです。最近“歌って踊ってみた系”をやってるのも、MVをやりたいから。あと、去年やったドラマもすごいおもしろくて、最近プライベートでは簡単な短編も撮影中。そういう演技ものも、今後やっていきたいと思ってます。……なので、仕事ください!
山本やりたい仕事は企画のなかに必ずひとつは入れたほうがいいよね。
神口そうですね。串田はダジャレの企画入れがちじゃない?(笑)
串田(笑)。実現しそうな現実的な企画だけというわけにはいかないから、いろいろメニューは取り揃えようかなって(笑)。
神口今回の企画のメニューはこれですって感じね。わかる。
三品私もやりたいこといっぱいあります!! 地域創生と舞台と、役者がやりたいんです。とくに地域創生は、社長面接のときにもやりたいと言ってて。
牧野地域創生って、勝手に売り込みに行っちゃダメなの?
三品売り込んでますよ。地方は映像の需要が結構あるので。あと、地方を拠点として映像を作っている制作会社がちょこちょこあるから、そこに「ディレクターとしてやらせてください!」と伝えたり。
牧野それが1回でもつながるといいよね。
三品はい、今チャンス待ちって感じです。
鈴木僕は、CMやりたいです。そのCMの中でも、自分は人間ドラマがあるものだとか、あとはクスっと笑えるような企画が好きなので。自分の企画を採用してもらって、演出できればいいなと思います。
史門サービスや投資の企画をやりたいです。そういうものの企画を、おもろいじゃんって言ってもらえることがたまにあるんで、挑戦したいですね。あと、最近はメイキングを作るのがたのしくて、めちゃくちゃ作ってます。自分でカメラを回してって、そういうのが好きで。
神口僕はひと通りやって自分の向き不向きもわかったから、今まで上手くいかなかった仕事を、もう一回やり直したい。自分の中でこれは「キラーコンテンツだ!」と思ったことが、いろんな都合でダメになったことも多いから、そういうのをもう一回やれるチャンスがあればやりたい。ディレクター人生、もう一回やり直したいっすね。
田中僕はSFやりたい。
神口お、宇宙?
田中いや、未来。あとは“東京のいいロケーションを見つけました椅子取りゲーム”に参加したいな。
串田僕は15秒のCMをもっとやりたいですね。15秒は長尺よりもルールが厳しい分、クライアントとの深い信頼関係ができやすいと思うんですね。なので、ずっと長くこの仕事をやるためにも、CMディレクターとして他の人じゃなくて僕にずっと頼んでくれるように。
牧野僕のいちばんやりたいのはロケです。単純な話ですけど、この時期はロケがやりにくいし、やっぱりロケがすごい好き。操上さんもよく言ってたけど、その瞬間にしかないもの、その日その時間で全部違うもの。そういうのをキャッチしたい。
山本ロケ後のご飯やお酒もうまいしね。
牧野ピラミッドフィルムで稼ぎ頭のCM演出をやって欲しいと思ってる。一人ひとり、みんながもっともっと頑張って世の中に自分をアピールして欲しいかな。
山本今は大変な時期だけど、ピラミッドフィルムの企画演出部は優秀だということを再認識して、ワクワクできる仕事を一本でも増やしていきましょう。
*ピラミッドフィルムWEBサイトでは、Directorの紹介ページで、それぞれが手掛けたCM作品も公開中。ぜひご覧ください。 [ https://www.pyramidfilm.co.jp/directors/ ]